鍼灸院治療マニュアル:中国鍼灸のテキスト

著者の浅野周(あさのしゅう)氏は中国系の技法を習得した鍼灸師です。
本書は著者の実践する鍼灸術を体系化したマニュアルです。

著者は87年に鍼灸師免許を取得後、中国に留学して臨床を学び、帰国後もその技術を磨いてきました。
そして臨床の傍ら、中国の医学文献を翻訳出版するなど、精力的に執筆を続けています。

本書もその一端で、浅野氏の治療院「北京堂鍼灸」で、弟子に行なっている指導内容を体系化したものです。
木下晴都氏の「鍼灸学原論」と朱漢章氏の「小鍼刀療法」をベースにし、中国留学の経験と臨床での知見を加えたものがまとめられていました。
著者は、「筋肉の収縮・痙攣が内部の神経・血管・内臓を圧迫して様々な障害を引き起こすこと」が病因としています。
緊張している筋肉を鍼で直接刺激することで、筋緊張を緩和させ治癒に導くことを目的としていました。
黄帝内経の霊枢、鍼灸甲乙経、鍼灸大成などの古典の内容は熟知した上で、五行理論は除外し、経絡論は神経説で説明できる部分のみを援用するなど、自在に扱っているようでした。
鍼で狙うのは筋肉の緊張部位なので深刺となることが多く、正確に鍼を扱う技術が必要になります。
目標の筋に到達したなら、そこで20分以上置鍼すると筋は収縮と弛緩を繰り返して血流を回復し、治癒へと向かうという流れです。
狙う場所は「病的部位(=地部)」の他に、神経出発部で脊椎周辺部などの「上流部分(=天部)」、「神経の中途で障害の起きやすい部位(=人部)」の3箇所で、「天地人治療」と称して重視していました。

各論としては36疾患の鑑別法、治療法がまとめられていました。
一般的な疼痛疾患である、頭痛、肩痛、腰痛、膝痛などに加え、クローン病や生理痛などの内臓疾患、口内炎などウツ病など様々な疾患に及んでいました。
各疾患については著者の試行錯誤や思考の過程を含めて丁寧に書いていて、例えば、大腿後面の「ハムストリング痛」などは興味深いものでした。
大学運動選手のケースで、当初は局部治療で簡単に治ると高を括っていたところ、痛みが取れずに著者は焦りました。
そこで支配神経である坐骨神経の異常を考え、上流(=天部)である梨状筋を治療しましたがうまく行きません。
頭を抱えますが、坐骨神経の通過先であるフクラハギに痛みがなかったことから、坐骨神経には分岐があり、中間部分(=人部)のどこか、本ケースでは坐骨結節部で圧迫されていることを突き止めました。
果たして、そこに針をするとハムストリングの痛みは見事に取れました。

後半では開業の方法論や中国留学時の思い出が、エッセイの形でまとめられていました。

「開業では、治せない患者は引き受けないことが重要になる。
その上でぎっくり腰治療などの得意な疾患を磨き、100%の治癒率に近づけることを目指す。」

「中国鍼灸は毛沢東以降に成立したもので、60年代の日本鍼灸が基礎になっている。
80年代からは比較実験を元にマニュアル化が進み、弁証論治は使われなくなった。
90年からは筋肉を狙った小針刀の理論が普及して、解剖に力点が置かれている。」

本治療法の目的は「筋緊張を取ること」で、そのための手段は「緊張している筋を針で正確に貫くこと」というシンプルなものです。
もっとも、そのためには緊張部位を診断する技術、筋を正確に貫く技術の習得が必須で、簡単ではありません。
しかし技術の方向性は明確で、確かな世界観を提示してくれています。
また本書の内容は、臨床の知見や整形的な知識が丁寧に整理されていて、著者とは異なる技法の治療家にも得るところは大きいと思います。
様々な情報が凝縮されていて、読み応えがある好著でした。

病院×鍼灸

時々、「病院の中にハリがあれば通いやすいのですが」という話を聞くことがあります。
病院と鍼灸というと突拍子もない感がありますが、国内にそうした試みが取っている所があります。
取っ掛かりになるのが漢方で、鍼灸とは元々は1つだったことから「東洋医学科」と標榜して、病院内で漢方と鍼灸が同時に受けられるのが特徴です。
そうした試みを行なっている病院を紹介します。
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旅のカバン2018

旅好きなのでバッグには一定のこだわりがあり、ここに最新版をまとめています。
旅先では徒歩による移動時間が格段に増えます。
バスや電車はどうしても旅行者にはハードルが高く、頼りになるのは自らの足になるからです。
この時、重すぎるカバンは足枷となり、疲労が蓄積して自由が制限されます。
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読書レビュー


現在ブログ内の整理を行っていて、読書記録もその1つに挙がっています。
放置していたサイトですが、散逸していた情報をここにまとめて行こうとおもています。

中高年の突然死:心筋梗塞

私が開業する際にお世話になった方がなくなったとの連絡がありました。
60歳前の男性で、とても元気のよかった方です。
就寝中の突然死ということで、おそらく心臓の虚血系発作だと思うのですが、他に脳血管系の可能性もあります。
いずれにせよ、死の兆候のなかった方だったので、改めて死について考えさせられました。

死は生まれた時から隣を歩いてくれているパートナーで、ふとした時に「もういいよ」とやさしく肩を叩いてくれます。
それがいつかは誰にもわかりません。
ただし病気によっては死の兆候を示してくることがあり、なるべくそれを見逃さないように日々鍛錬を続けています。

診察の話を書くつもりだったのですが、今日は心筋梗塞について書いてみます。
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