病院×鍼灸

時々、「病院の中にハリがあれば通いやすいのですが」という話を聞くことがあります。
病院と鍼灸というと突拍子もない感がありますが、国内にそうした試みが取っている所があります。
取っ掛かりになるのが漢方で、鍼灸とは元々は1つだったことから「東洋医学科」と標榜して、病院内で漢方と鍼灸が同時に受けられるのが特徴です。
そうした試みを行なっている病院を紹介します。

  1. 埼玉医大病院
    2015.08 読売新聞ここは84年から神経内科で鍼灸治療を開始し、現在は東洋医学科として独立していて、他科からの紹介患者を幅広く受けつけています。
    神経内科が後見的に患者を紹介することが多く、リウマチ、整形、頭痛や炎症疾患が多くみられます。
    研究も医師との連携をスムーズにして頭痛などで症例を重ねているようです。
    治療費は自由診療で、複数の関連施設ごとに異なっていて2625~4200円で設定しています。
  2. 明治国際医療大付属病院
    meiji鍼灸学校を母体とする学校の付属病院です。
    鍼灸は隣接する施設で行なっていることもあって原則として外来では行なわず、もっぱら入院患者に対して限定的に行なわれています。
    実施科は、内科、外科、整形、脳外、泌尿器などほぼ全科で対応しています。
    混合診療の観点から治療費は徴収されておらず、採算は度外視されています。
  3. 東京大学医学部付属病院
    日本の最高学府で、S59年より物療内科で鍼灸が実施され、現在はリウマチ内科で引き継がれています。
    疾患は腰痛を始めとする各種疼痛、アレルギーなどの難治、女性疾患などです。
    EBMを積み重ね、チーム医療の中で鍼灸が活躍する現場作りも試行錯誤していて、一部の疾患についてはクリニカルパスの中で鍼灸が運用されています。
    入院患者だけでなく外来での受診も可能で、一回4000円程度の自由診療で30名/日を受け付けています。
    スタッフは、常勤5名、研修生5名、海外留学生2名です。
    研修生は年間10万円前後の研修費が必要で、週二回の研修指導とカンファレンス参加、実技指導などが行われていました。
  4. 岐阜大学付属病院
    1993年より漢方外来で医師自らが鍼を打っていましたが、2002年の病院移転の時に独立した鍼灸治療専門のスペースが作られて以降はスタッフに鍼灸師が加わりました。自由診療で、治療費1260円で施術されています。
    呼吸器内科が中心になって症例の蓄積が進んでいて、発熱、倦怠感、喘息などに対して漢方と鍼灸を併用して効果を上げています。
    スタッフは非常勤が5名です。
  5. 愛媛県立中央病院
    伝統的にお灸文化を持つ県の公立病院です。
    入院設備を持つ大きな病院で、ここの鍼灸治療室で鍼灸治療を行なっています。
    かつては東洋医学研究所内にありましたが組織改組で独立し、漢方内科に付属する形で存在しているようです。
    この病院の特徴は、時系列に細かく分析する独自の問診票を採用していることで、生育歴から病歴、人間関係など書くだけでも30分以上かかるような詳細なものを使っています。
    そして治療は誰がやっても同じとなる統一方式が取られていました。
    名人芸や個性が出る「経絡治療」や「中医学」理論は取り入れず、澤田流や深谷灸、刺絡とカッピングなどの独自のスタイルを築いています。
    治療室は全部で12ブースで、うち2ブースは2人のドクター、残り10ブースを4名の鍼灸師が2つずつのチームで担当します。
    費用は自由診療で、初診料が2780円、治療費が4320円、お灸指導費が1180円です。
    治療時間は30~40分、補助者が1人ついて2つのベッドを効率よく使い分け治療します。
    灸、灸頭鍼は澤田流と深谷灸で「鍼灸真髄(代田文誌著)」などがテキストに使われているようです。
    漢方薬も併用する患者もいます。
    しかし公立病院としての制限から通院は3か月を目安にかかりつけ医への転院が推奨されていて、通院を希望する患者さんを説得する必要があるようでした。
  6. 市立砺波総合病院
    地方の中核都市にある総合病院内の鍼灸施設です。
    県の和漢薬の伝統の一部を引き継ぐ形で生まれた東洋医学科の中にあり、スタッフは漢方医1名、常勤鍼灸師2名、研修鍼灸師若干名の体制を取っています。
    治療室ではベッド5台を配して1日約20名の患者を受け入れています。
    鍼灸治療は漢方医の診察を受けることが前提となっていて、他科との連携も試行錯誤で進めています。
    他科からは末梢神経性顔面麻痺、外傷後疼痛、顎関節症などの紹介を受けているようですが、担当医の理解次第で変動するようでした。
    鍼灸治療は一人当たり2~30分くらい。
    混合診療が使えないので治療費は無料で、漢方外来と合算することで採算はギリギリとのことでした。
    そのため卒後研修として2年間臨時職員を受け入れていますが、日給7000円程度と低めに設定されていました。
    なお研修期間中は臨床実習、カンファレンス出席、古典研究会、学会活動などが義務付けられています。治療スタイルは経絡治療をベースにして接触鍼などを取り入れているようでした。
  7. 三重大学麻酔科
    平成22年より同大学内の麻酔科内の「統合医療・鍼灸外来」で鍼灸が行われています。
    検査で原因がわからない痛み、鎮痛剤の効果が少ない疼痛緩和を中心にして、他にも頭痛、めまい、不眠症などの神経系疾患や、関節炎やリウマチなどの運動器系疾患に対応しています。
    鍼灸スタッフは提携先の鍼灸大学からの派遣鍼灸師で、外来は月~金曜日の午後2~5時、自由診療で、初診は4500円、再診3500円としています

以上、やや古い資料をもとにしていますが、国内医療機関で鍼灸を行なっている施設をリストアップしてみました。
特徴としてはそもそもの誕生、研究で医師の影響が強く働いている点にあります。
そのため医師は病院内で後見人的な立ち位置を取り、その専門分野が鍼灸臨床にも強く反映されます。
当面の課題は、混合診療禁止の制限をどのように乗り越えるか、5分~15分以内という短い時間で十分な治療を行なうための方法論の構築になるでしょう。
病院内の鍼灸についてメリット、デメリットの両方はあり、統合医療として興味深い試みだと思いますが、近場でそのような施設がないことが残念です。