医学生からの診断推論:診断のエッセンスが凝縮

徒手検査と問診によって病気を正確に把握することを目標としているので、手に取りました。

研修医向けのテキスト
著者は山中克郎医師で、総合診療を専門としています。
本書は、問診と身体診察による診断推論について医学生や研修医向けに解説していました。

研究から臨床に転向した医師の労作
著者は名古屋大学卒業後は血液内科を専攻し、研究者として米国にも留学しました。
帰国後は臨床医として、専門分化の反省から生まれた「総合診療科」を専門にキャリアを積みました。
現在は諏訪中央病院で臨床、指導と忙しい日々を過ごしています。

本書は著者の長年の総合診療医としての知見が結晶化したものです。
第1章「心に火をつけろ」では診療に臨む心構えが記されていました。
一生学び続けること、周囲の人に感謝すること、診療時以外も誠実に振る舞うことなど、医師としての心構えがまとめられていました。
終盤では「人の行く裏に道あり花の山」という千利休の句を引用して、どんな経験も無駄にはならないので、自分だけの道を進んで生涯の宝を見出して欲しいとしていました。

第2章からは実際の推論に役立つ知恵が各論としてまとめられていました。
「診断は夜空で星座を探すようなもの」として、様々な情報を整理して診断へと到達する流れが示されていました。
具体的な診断は循環、呼吸、腹部、神経と4項目に絞られ、根本的な智慧が得られるように工夫が感じられるものでした。
合間には著者の経験に基づくアドバイスも添えられています。
「呼吸数を計りづらい時は、患者の呼吸に合わせると早いか遅いか直感的にわかる」
「お年寄りの長い話も、息継ぎで切れる瞬間を狙うと問診に入りやすい。」

著者による特典映像も
また特典として本書を補完する内容の動画が次の10本製作されていました。
患者との対面〜はじめの1分
循環器系の診察 ①頸静脈波
循環器系の診察 ②心音
呼吸器系の診察 ①胸部診察と聴診
呼吸器系の診察 ②COPDの診察
頭頸部の診察
腹部診察
神経診察 ①脳神経
神経診察 ②小脳機能
神経診察 ③歩行観察
これらは出版社のサイトでパスワードを入力することで閲覧できました。

薄い本の中に濃厚なエッセンスが凝縮
本書ではこのように臨床の哲学、診断のコツなどが丁寧にまとめられていました。
濃厚な情報が凝縮され、他書からの引用も多く、曖昧になりやすい分野などが重点的にピックアップされていました。
特典映像もわかりやすいもので、温かな著者の人柄を彷彿とさせるようなものでした。
全体的に自身の知見を伝えたいという熱意を感じさせるもので、ページ数は多くないものの読了まで時間がかかりました。
医学生向けですが著者の長年の経験が結晶化されたもので、読者を選ばない普遍的な内容だと思いました。
熱い思いが伝わるような好著で、オススメです。