人生はなんのためにあるのか:私たちがここにいる理由

著者は米国人のカウンセラー、マイケル・ニュートン氏です。
本書は出生前に遡る「退行催眠セラピー」で集めた知見をまとめたものです。
この本は知人に勧められて手にとって見ました。

著者のニュートン氏は米国で生まれ、行動療法のセラピストとしてカウンセリング治療を行なっていました。
懐疑的な性格だったので催眠療法や伝統的なセラピー技術を中心とし、退行催眠には抵抗を感じていました。
しかし原因不明の慢性痛を訴える男性患者が、第一次大戦時中の過去生を想起することで痛みが消失したことが転機となりました。
未知の現象だった「前世」というものには、何か大切なものがあるのかもしれないと興味を抱きました。
患者たちの何人かは過去生を思い出すことで心身を回復することを経験し、その過程で前世と現世の間、生まれる前の中間領域での経験も重要な示唆を与えてくれることに気づきました。
患者らは現世では感情の波に翻弄されていますが、魂として留まっている中間生を想起すると、高い視野で「現世に生まれる理由や目的」、「彼らを指導するガイドの存在」、「宇宙の真理」などに深い洞察を持っていました。
こうした現象におののきながらも、研究者らしい感性で情報を収集、分析し、数十年もの研究成果が結実したのがこの本です。

本書は29の症例を引用しながら、「私たちはなぜここにいるのか?」という究極の命題に挑んでいます。
まず「死」がスタート地点になります。
現世では死が終わりですが、魂にとって死は始まりになるからです。
死者は先に死んだ肉親らに迎えられ、懐かしい霊界へと帰還します。
霊界では自分のグループと合流を果たします。
彼らは魂としてのレベルが近く、感性の似た、最も気の合う親友以上の存在たち同士でグループを作っているのです。
懐かしい仲間と親密な時を過ごして、冒険の後の束の間の休息を満喫します。
その後で、肉体時代のふりかえりを先達であるガイドの助けを借りて行います。
もっと忍耐強くあるべきだった、無償の愛情を抱けなかった、などの反省を行い、成長の糧とします。
そして更なる成長と冒険の機会を得るべく、転生の準備に入ります。
ガイドに導かれて、適切な時代、国、両親、ボディを探し出し、転生に関連した過去と現在、未来の可能性を見せられます。
本人が納得すれば、記憶を忘却し、新たな生を1から過ごすことになります。

本書によれば魂にはレベルがあり、学び始めたばかりの若い魂から老成した魂など様々で、その成熟度に応じて様々な役割を負っているようでした。
成熟した魂は現世での学びの必要がなくなってあまり転生しなくなるのですが、その数少ない例外を描いた「第11章 進歩した魂」は白眉でした。
老成した魂が語る宇宙の真理などの深遠な内容や、肉体の欲望にとらわれて再起不能になってしまった霊魂の浄化のことなどが述べられていました。

「魂の発展に応じて、内から放たれる輝きが異なってきます。
一般的に若い魂(レベル1)は白く輝いていて、だんだん赤(レベル2)や黄色(レベル3)などの色彩を帯びてきます。
成長すると色彩の密度が増し、暗い黄色(レベル4)になると若い魂のガイドになることができます。
さらに成熟すると明るい青(レベル5)となり、ガイドとしても上級レベルになってきます。
さらに上になると青紫(レベル6)、紫へと収束して行きますが、転生する普通の魂では知覚できない至高の存在です。」

「ガイドは生涯にわたって被験者をサポートする存在で、その意図は私(著者)の思惑を超えて働くことがあります。
被験者の過去生の記憶が蘇る手助けをしてくれても、霊界の成り立ちや宇宙創造などスケールの大きな問には答えを妨げることがあるのです。」

「魂は成長のために、あえて人との関わりを避けて孤独を選ぶこともあります。
ある男性は真理を求める探求者として、多くの人生で放浪することを選びました。
生の合理的な意味を求めながら、途上で出会った人々に助けの手を差し伸べてきたのです。
その一方で定住の不自由さを学ぶために、農夫の嫁としての人生も経験していて驚きました。」

「魂は成長すると(レベル5)もはや肉体で過ごす必要がなくなります。
それでも敢えて転生し人や地球を助ける人もいて、彼らは「賢者」と呼ばれています。
賢者は都市から離れて住み、時に放浪し、人々に手を差し伸べています。
その上の存在(レベル6)は「いにしえの者たち」と呼ばれ、ガイドの統括や宇宙の創造に関与しています。」

本書はこのように退行催眠で前世や中間生の情報を集め、存在や宇宙について考察がなされていました。
退行催眠や前世については、飯田史彦氏やワイス博士の著書で知られつつありますが、それらとは異なるアプローチをしていて味わい深いものがありました。
科学的に証明の難しい内容で荒唐無稽なものかもしれませんが、真理の響きを直感させられるものでした。
もし人が本書のような存在であるのなら、真の意味での癒しや治癒というのは簡単ではないと痛感しました。
翻訳もノイズを感じさせない丁寧なもので、読み応えがありました。
ニュートン氏の著書は他にもう一冊邦訳版が出ているようなので、そちらも読んでみるつもりです。充実した読書体験となりました。