降圧剤について

高血圧の方から降圧剤について質問を受けたので、ここにも簡単にまとめてみます。


 血圧は心臓がポンプとして血液を送り出す強さで、「自律神経」と「腎臓の細胞群」で調整されています。
収縮期血圧と拡張期血圧があり、収縮期は高齢と共に上昇し、拡張期血圧は年齢に関係なく二次的に上昇するケースが多いとされています。
問題となるのは収縮期高血圧の方で、心臓からの血流量の増加で心臓と血管に負担をかけるので心筋梗塞や脳卒中(脳出血と脳梗塞)を誘発するとされています。
そのために次の降圧剤が処方されています。
「血管を拡張して血管抵抗を下げるタイプ:Caブロッカー、ACE、ARB」、「心臓にある交感神経受容体を遮断して心拍圧を減少させるタイプ:βブロッカー」、「腎臓でのNa+再吸収を阻害して尿量を増やすことで血圧を下げるタイプ:利尿剤(プロセミド、チアシド)」などです。

 高血圧の基準値は1987年には180mmHgでしたが、段階的に下げられて近年は140mmHgとなっています。
しかし血圧は人体が血液を全身に適切に送り届けるための自然な反応とも考えられ、血液が不足して認知症や脳梗塞、転倒リスクが高まることが指摘されています。
そのため血圧が年齢+100程度が適量で、動悸、息切れ等の自覚症状が限りは下げない方が良いという考えもあるのです。

・カルシウム拮抗薬(カルシウム・ブロッカー):ニフェジピン、ヘルベッサー
血管平滑筋を収縮させるシステムに干渉して血圧を下げる薬です。
血管筋の収縮はカルシウムイオンが調節しています。
カルシウム拮抗薬はカルシウムイオンの血管内流入を防ぐことで、血管筋の収縮を妨害して血圧を下げます。
しかしカルシウム・チャンネルは全身にあるため、この薬の作用も全身に及ぶのでムクミなどの副作用が現れることがあります。
またグレープフルーツに含まれるフラボノイドは肝臓での分解作用を3日以上も妨げるので、降圧剤が長く作用して血圧が下がりすぎるため禁忌とされています。
近年はACE阻害剤と合剤にした「レザルタス」やARBとの合剤である「ミカムロ」なども発売されています。

・ACE(エースAngiotensin Converting Enzyme:アンジオテンシン転換酵素)阻害剤
 カルシウム拮抗薬の全身に作用する副作用を解消するために、血圧上昇を大本で管理する腎臓を狙った薬です。
腎臓では自身の集合管でNaを再吸収して血圧を上昇させる「アンジオテンシン(=以下AT)系」ホルモンを生成しています。
このATホルモンが作られないようにすることで血圧を下げる薬で、ACEと次のARBの2薬があります。
ACEではAT2の元となるAT1から2への変化を促す転換酵素を妨害します。
副作用として、尿量は増えて体内の水分量が減るのに喉が渇かないので水分不足となって空咳が出やすいこと。
また NSAIDsを併用した場合は腎内に流入する血流量が減少するため、腎機能が低下してしまうことがあります。

・ARB(AII受容体拮抗薬):バルサルタン、オルメテック
 空咳が出るというACEの欠点を克服するための作られた新薬です。
ACEのようにAT2ホルモンへの変化を妨げるのではなく、その次の段階である「AT2の受容体にフタをする」ことで血圧が上がるのを防ぎます。
血圧上昇回路への干渉がより精緻になったことで、ACEで問題となった空咳は起こりにくくなりました。
しかし2割くらいの確率で、腎機能の悪化、目眩、腹痛などの副作用が出ることが添付文書に記載されています。
羊水にも働くので妊婦にも注意が必要です。

・利尿剤チアシド=インダパミド(商品名:ナトリックス)
 腎臓でのナトリウム再吸収を妨害することで尿量を増やし、循環血液量を減らして血圧を下げます。
ナトリウムには水分を引き込む力を利用したものです。
古くから使われる降圧剤で、値段が安く、電解質異常などの他は副作用が少ないとされています。

・ベータブロッカー(=β遮断薬):アテノール、ビソプロロールフマル
 先の血管や腎臓を狙った降圧剤とは異なり、ベータブロッカーは心臓の交感神経を活性化する「β受容体」を塞いで交感神経を抑制することで血管壁の緊張を緩め、血圧を下げる薬です。
高血圧以外にも狭心症や不整脈などでも使われていますが、相対的に副交感神経を強めることになるので、気管支が収縮しているCOPDや喘息の人には禁忌です。