仰向けの触診

次に仰向けで見ている場所について書いてみます。

*腹部
まず腹部全体を観察し、腹水が貯留して左右に広がっていないか(カエル腹)、肝硬変の兆候を示す静脈怒張(メドーサの頭)などがないかを確認します。
次に臍に軽く手を乗せて腹部全体の緊張(=腹膜炎)とやや左にある腹部大動脈の拍動(=動脈瘤の可能性)を確かめます。
そこから恥骨方向に下ろしながら下腹中央の子宮や膀胱、左側の便秘、右側の虫垂炎や憩室炎を。
上に戻して右肋骨下で肝臓と胸脇苦満、鳩尾の心下痞硬(=胃熱や水毒、ストレス)、左肋骨下で脾臓や膵臓を調べます。
恥骨痛があるなら骨盤が歪んでいる可能性があるので、左右の上前腸骨棘を比較して左右差を確認します。

*胸部
ここはまず胸骨です。胸骨の固い感触は、感情のわだかまりがあることが多いようです。
胸骨裏に痛みがあるなら心臓近辺の血流悪化が懸念され、狭心症などに注意します。
続いて鎖骨から外に向けて、小胸筋・肩口・腋窩・腕を調べます。
鎖骨上窩は重要なリンパ節が集まり、頸部の筋群の反応が出やすい場所です。
鎖骨下窩の「胸郭出口」は上腕に向かう神経や血管が通って腕の痺れと痛みに関与する部分です。
肩関節に異常があるなら、横臥位など姿勢を変えて肩口、上腕の異常を見ます。

*腕
腕は肩から指先までが協調して動くので、肩を含めて腕全体を見ます。
上腕裏の三頭筋の張り、肘の筋付着部、トウ骨と尺骨の二骨間の筋の緊張をチェックします。
これらの歪みや緊張が、肩やバネ指に悪影響を及ぼしていることもあります。

*顔面
顔面ではコメカミを起点とし、頬筋と耳周辺リンパの2つのルートを辿って目と頬の緊張をみます。
感情面に緊張があると顔面筋に影響を及ぼしやすくなります。
顎や頬の緊張があるなら、開口してもらいながら顎関節を緩めます。
開口時には耳の前のエイ風に空洞が現れますが、この空洞が小さかったり強い疼痛があるなら耳周辺部に異常があるかもしれません。
次に鼻筋で顔面部の緊張をチェックし、首を横に倒してもらって対の鎖骨−乳突筋を調べます。
慢性閉塞性肺疾患(=COPD)の兆候となる乳突筋の緊張や、心臓の異常を示す頸静脈怒張がないかも確認します。

*骨盤と下肢
下肢では冷えや痺れ、ムクミを中心に見ていきます。
大腿前面にシビレがあるなら鼠径部の循環に不安があるので、大腰筋や鼠径リンパを確認します。
大腿四頭筋や腸脛靭帯の緊張も、体位を変えながらチェックします。
下腿は坐骨神経の反応が出やすいところなので、骨沿いを押しながら疼痛を確認します。
特に三陰交付近は瘀血の反応としても重要です。また下腿前面を指で押して跡が残る浮腫があるなら、心臓や腎臓の状態が気になります。