モンゴルの鍼灸事情

mongolia
世界の鍼灸を調べているので、その備忘録として、ここに残してみます。

・概要
モンゴルは中国とロシアに挟まれた所にあり、国土は広い草原地帯を抱え、高度が高いのが特徴です。
騎馬民族としての歴史を刻み、最盛期はユーラシア大陸に広大な帝国を築きました。
しかし後には衰退し、ソビエト連邦下に入ったり、中国による国土の割譲を甘んじるなど起伏の激しい歴史をたどったようです。

・医療の歴史
モンゴルはかつて中国を支配していたことから伝統医療として鍼灸と漢方が、また戦乱期が長かったために外傷医学を発達させてきました。
しかしソビエト連邦下に入った1924年から90年までは西洋医学のみしか行えず、鍼灸を始めとする伝統医学の系譜は一旦途絶えました。
しかし連邦を離れた90年代以降になって伝統医学が復活を果たしています。

・近年の医療状況
首都のウランバートルを中心に総合病院が建ち、そこでは日本同様の診療科を持っていますが、技術水準や機器については立ち遅れた部分もあります。
治療は西洋医学が中心ですが、伝統医学も勃興していて、94年には伝統医学大学が設立して以来、西洋医学と併用した治療体系を模索しています。
伝統医学は鍼灸、漢方、マッサージ、温泉・泥療法などがあります。
特に温泉・泥療法はモンゴル独自の医学として盛んで、神経痛や手術後の養生などで利用され、モンゴル力士たちが母国の施設で療養する姿は時に日本でも報道されている通りです。
たとえば同国にある「オリギル温泉治療センター」では、薬草を入れた16もの浴槽があり、充実した設備をもっています。
モンゴルの治療費は社会主義の影響から、基本的に無料です。

・モンゴルの鍼灸
鍼灸を行う資格は伝統医学校で6年間学び、卒後2年の研修を経て授与されます。
治療は、中医学の証を判断して、それに従って経穴の選択を行なうという、典型的なTraditional Chinese Medicineスタイルを採用しています。
灸は棒灸や灸頭鍼を利用していますが、日本のようなモグサを直接乗せることは行なっていません。
患者は疼痛疾患がほとんどで、一部内科疾患を扱っています。

モンゴルでは国を挙げて自発的な伝統医療の回帰が行なわれているようで、意外な気がしました。
縁があれば訪れてみたいと思います。

★参考文献
「モンゴル国の伝統医療と疼痛治療」Eiji Sumiya 2009 日本慢性疼痛学会発表資料より