旅情

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新年度に向けた雑用があって、ここはほとんど放置の状態になっていました。
治療に関することは書きたいことがたくさんあるのですが、今日は本について。

本の選定はその時々の興味に応じたものをピックアップしているのですが、中にはあまりトレンドと関係なく普遍的に心の琴線に触れるジャンルというものがあります。
それは「旅」に関するものと、「マイナリティ」に関するものです。
引越しが多かった私にとっては、人生そのものが旅のようなものであり、束の間に着地した場所ではたいていがマイナリティです。
そのせいか、そうした人々に対して強い共感を感じることがあって、時に感情移入し過ぎるので意識的にセーブしています。

そんな本を初めて読んだのは池澤夏樹さんの「スティルライフ」でした。
最近だと朱川湊人氏の「箱庭旅団」と白石一文氏の短編集「愛なんて嘘」で、登場人物のセリフに強い共感を感じました。

箱庭旅団は少年が幻想世界を旅する物語です。
少年は旅先では常に傍観者で訪れた人々に対して干渉したり影響を及ぼす行為はできません。
彼にとって旅とは「いつか懐かしい我が家に帰るためのもの」でした。
そんな彼がたった一度だけ、旅先で出会った少女を旅に誘ったことがあります。
「もし僕が誘ったら、一緒に来てくれるかい?」
しかし忙しい日常と叶えるべき夢を持っていた少女は、結局彼の道連れにはなりませんでした。

白石氏の短編集は、そのうちの一編「夜を想う人」です。
その中にも旅を続けている女性が登場し、彼女は旅を続ける理由を次のように語っていました。
「やっぱり一人が好きだからかなあ。
1人だと寂しいけど、それに慣れると病みつきになっちゃうのよね。
でも長い間色々な場所を巡ってると、時々ガクって来ることがあるの。
そんな時は、かつての我が家に骨休めに帰ってくるんだけどね。」

箱庭旅団の少年の誘いの言葉を読んでいる時、無意識のうちに少女の側に立っていました。
そして自分なら「行く」と答えるだろうな、と思いました。

今年の旅の準備は少しずつですが進んでいます。