セレンディピティ

天使

患者さんと話をしていて、ふいに宝くじ買うのってどうなんですかね、という話になりました。
宝くじは胴元である国家が購入金額の半分以上を取り、残りの分を当選者で分け合う、という形式を取っているので、確率という観点から見るとハイリスク・ローリターンの投資とは呼べないレベルのものです。
この胴元であるギャンブルの主催者の取り分は、宝くじやロト6が50~60%、競馬、競輪、競艇が約25%、ルーレットが約5%、パチンコが3~8%くらいです。
これからすると、宝くじはほとんど勝てないギャンブルで、パチンコより分が悪いといえます。
しかし世の中では時に確率を越えるようなセレンディピティと呼ばれる出来事が起こることがあるので、結論付けるのは難しいとも思っています。

例えばここ数年来を振り返ってみても次のような出来事がありました。
知人の今田さんと一緒に、転勤になる吉川さんの送別会をしていた時のことです。
話題が「珍しい苗字」の話になり、今田さんの高校時代の友人の話が出ました。
その時、吉川さんも奥さんからその珍しい苗字の友人がいる、という話を聞いたことがあると話しました。
今田さんは埼玉出身で、その当時の友人は埼玉県から群馬に転校し、吉川さんの奥さんは群馬の出身でした。
そこで「ひょっとして・・・」という話になり、吉川さんは奥さんにその場で電話して友人の苗字、名前、特徴を確認しました。
その結果・・・同一人物だということが判明しました。

また熊井さんという知人と話していた時のことです。
実家の話題になり、そこは江戸期から続く有名な養蜂家だということでした。
それから数日後、同じ町の三森さんと話していた時、母方の祖母に不幸があり旧家だったので葬儀が大変だったという話が出ました。
何となく興味が湧いて実家の仕事のことを聞いたら「養蜂」だといいます。
立て続けに聞いたキーワードが面白かったので、熊井さんの実家のことを三森さんに話しました。
後日二人が顔を合わせた時に話したところ、実は二人の実家は同じでこの二人は親戚筋にあたることが判明しました。
二人は本州の別の県に住み、別々の時期にこの町に移住してきましたので、かなり珍しい偶然の一致だと思います。

私ごとですが、先年、ドイツに行ったとき、偶然知り合ったドイツで開業していた日本人鍼灸師にお会いしました。
そして話の中で彼女のお兄さんはウチの治療室から徒歩10分の所に事務所があることが判明しました。
彼女は本州の出身で、お兄さんはこの町の移住者であることを思うと、これもかなり低い確率です。

最後に偶然についての決定的な思い出を書いてみます。
高校時代、図書館でZ会という通信教材で英訳の課題を解いていた時です。
アメリカの精神科医が書いたと思われる難しい構文が抜粋されていて、辞書で単語の意味を調べても文章として意味がまとまらず、全然わかりませんでした。
なので気分転換で書庫の中を歩いていき、適当に棚の前で立ち止まり、面白そうな本を物色していました。
ふと手に取った本をパラパラ眺めていると、何となく気になったページがありました。
どこかで読んだことのある文章を見つけた気がしたのです。
ページを戻って探すと該当の文章が見つかりました。
それはなんと!私が解けずに悩んでいた英文の翻訳部分でした。
広く、壁一面にある本の山の中で、偶然日本語版が出ている米国の論文を手に取り、数百ページもの中で、その該当文章をたまたま見つけた、というわけです。
この時、鳥肌が腕、肩、首にのぼっていき、誰かに観察されているのではないかという気がして気持ち悪かったのを鮮明に覚えています。
お蔭でこの課題の時には全国でもトップ20くらいに入る高得点を取り、後にも先にもこの一回だけという記念の図書券をもらいました。

このように人生はふとしたことで確率を越えるような途方もない出来事が起こることを実感しています。
なので宝くじに夢を乗せることは無駄ではない・・・のかもしれませんが、振り返っていてもこうした出来事は無心・無欲である時に起こるような気がします。
だからやっぱり欲にまみれた私が買うことはないのだろうなと思います。