メメントモリ-あるコメディアンの手紙

最近、癌の患者さんと接する機会がたびたびあり、改めて死というものについて考えています。
人生の先輩と呼べる方々との治療中の交流は、長年連れ添ったパートナーのこと、大切な人との別れ、過ぎ去った青春時代の夢のこと、思うように動かなくなったカラダのことなど、いつか来る未来の一端を感じさせて下さいます。
そうしたことはいつかまた書いてみたいのですが、今日は感銘を受けた手紙から。
作者はアメリカのコメディアン「ジョージ・カーリン」氏で、奥さんを亡くした折に友人宛てに出したものです。

桜雪

近頃は、ビルは高くなったけど、みんなの気は短くなり、
高速道路は広くなったけど、みんなの視野は狭くなった。
前よりたくさんお金を使っているけど、得た物は少なく、
以前よりたくさんの物を買っているけど、楽しみは少ない。

家は大きくなったけど、そこに住む家族は少なくなり、
世の中は便利にはなったけど、時間に追われるようにもなった。
たくさんの学位を持っても、センスがあるとはいえず、
知識は増えたけど、決断することは少ない。
専門家は大勢いるけど、問題はむしろ増えている。
薬の種類は増えたけど、病人の数も増えている。

飲み過ぎて、吸い過ぎて、浪費し過ぎても、笑うことは少ない。
猛スピードで運転し、すぐ怒る。
夜更かしをしすぎて、目覚めても疲れたままだ。
テレビを見る時間が増えても、祈ることは滅多にない。
愛することはほとんどないのに、憎むことが多すぎる。

お金の稼ぎ方は学んだけど、人生は学んではいない。
長生きするようにはなったけど、人生を生きてはいない。
月まで行き来できるのに、近所の争いは絶え間ない。

外の世界は支配したけど、中の世界はどうなのか。
大きなことはやり遂げたけど、善いことは何もしていない。

空気をきれいにしたのに、魂の汚染は広がっている。
原子の世界まで支配したけど、差別や偏見はどうすることもできずにいる。
沢山書いているけど、学んではおらず、
計画は増えたけど、成し遂げられることは少ない。
急ぐことは学んだけど、待つことは学ばず、
情報を得るためにコンピューターを作ったけど、
コミュニケーションは減り続けている。

消化の悪いファースト・フードを食べて、
体は大きくなっても、心は小さなままで、
利益には目がなくても、人間関係は無関心。

共働きで収入が増えたけど離婚も増え、
カッコいい家に住んでいるけど、中の家庭はボロボロ。

気楽な旅行、使い捨てのおむつ、モラルも使い捨てにして、お手軽な一夜の恋に走る。
ぶよぶよの太った体を持て余し、クスリを飲みまくっている。
ハイになるために、心を静めるために、そして死ぬために。
きらびやかなのはショールームの前だけで、裏の倉庫はカラッポのまま。
今はそんな時代。

インターネットのおかげであなたはこの文章を読めるけど、
ボタン1つで消し去ってしまうことも思いのまま。

だけど忘れないで。
大切な人と過ごす時間の、かけがえのなさを。
その時は、いつか必ず終わってしまうのだから。
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忘れないで。
あなたを見上げる小さな我が子に、やさしい言葉をかけることを。
その子はすぐに大きくなって、あなたの元を巣立っていくのだから。
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忘れないで。
あなたの隣の親しい誰かを、そっと抱きしめることを。
胸の奥から湧き出るこの宝物は、お金に代えられない価値があるのだから。

忘れないで。
あなたの愛しい人に、「大好きだよ」って伝えることを。
その時どうか心を込めて。
心からのやさしいキスと抱きしめる腕のぬくもりは、その人の傷をきっと癒してくれるから。
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そしてどうか覚えていて。
手を繋いで、共に過ごした時のことを。
その瞬間は、もう二度と来ないのかもしれないのだから。
だからどうか慈しみ、語り合い、心の中のかけがえのない想いを分かち合って。

人生の素晴らしさは、過ごした時の長さでは決まらない。
本当に大切なのは、感動で心が震える瞬間の中にこそあるのだから。

以上、この文章を翻訳しました。
自分なりの意訳も入れましたが、名文のせいか作業がとても楽しいものでした。